「競売でマンション(自宅)が欲しい」という田中さんのご希望は「3LDK程度の間取り」。築年数は新しく、東武伊勢崎線沿線。
ご予算は1000円万〜2000万円。
「田中 豊さん」(以後田中さんとします)から「競売で自宅を購入したい!」との依頼がありました。
田中さんの希望はマンション。条件は、「3LDK程度の間取り」で、価格は1000円万〜2000万円。
なるべく築年数は新しく、東武伊勢崎線沿線ということでした。
私には田中さんが、いきなり競売での購入を望んでいらっしゃるのが疑問でした。
そこで、初めてお会いした際に理由を尋ねると、いろいろと不動産を探されていましたが、室内のリフォーム等を含めるとどうしても予算オーバーしてしまい迷っていたところ、ふと、新聞の競売物件一覧に目が止まって、「これなら予算内で納まる」と思ったというのです。
しかし、競売は怖いという話をよく耳にするし・・・・・競売のことについても判らないので、一度相談してみたくなり、当社にご連絡を頂きました。
田中さん自身も競売について自分なりに、専門誌(雑誌)や知人に聞いていろいろ調べたそうですが、特に、落札/購入した際の一番の不安材料に、
* なかなか入居することができない
* 前所有者とのトラブル
という話をよく耳にするとのこと。
そこで私は、当社の入札代行システムをご説明し、入居者(前所有者や賃借人)との明け渡しについて全ての交渉を当社が代理で行い、田中さ
んの手間が掛からない点、明渡し命令(裁判所が発行する強制執行の根拠)を取得すれば裁判所で強制的に立ち退きをやってくれる点など、をご説明させていただき、上記の不安材料について、納得していただきました。
また、田中さんからは以下のような二つの質問も戴きました。
1. 「安全に取得できる物件かどうか事前に調べることができるのか?」
2. 「明け渡し命令の取得や強制執行の手続きもしてもらえるのか?」
事前に十分な調査(現地訪問や権利関係)を行い、購入してから入居するまでの期間や費用を算出すること。各種手続きに於いては当社入札代行システムに含まれている点をご説明すると、ご希望に合う物件がでたら入札してみたいとのご依頼をいただきました。
私が田中さんにお会いしてから二ヶ月ほど経過した頃、いつものように裁判所の(競売不動産の公示)情報を丹念に見ていくと、ひとつの物件情報に目がとまりました。
1.交通 東武伊勢崎線「谷塚」駅 徒歩○分
2.所在地 草加市谷塚町
3.最低売却価格 1335万円
4.専有面積 81.67u
5.間取り 3LDK
6.総戸数 47戸 10階建8階部分
7.建築年 平成元年7月
8.管理費等 ¥17,300(月額)修繕積立金含む
まず物件の現地調査から開始(競売の手続きには六ヶ月以上かかるため直前の確認が必須です)。対象マンションは全面にタイルが貼ってあり高級感があり、周辺の環境も良好。
共有部分の管理も行き届いており、管理組合や住人が自覚の高さが伺えます。
管理人に来訪の目的を告げ当該住戸のことを聞いてみると、物件所有者のケンジ氏本人が住んでおり、管理費の滞納については管理会社でないとわからないということだった。
住戸に行ってみるとケンジ氏が在宅しており、目的を告げたところ不満もあってか、いろいろな事情を話してくれ、すぐに退出するのは無理ということですが、話し合いには応じるといいます。
その後物件明細書の公開を待って内容を確認したところ、ケンジ氏は所有者兼債務者本人であり、どうやら買受後は明渡し命令の申立てをすれば認められそうです。
田中さんと面談し、資料を手渡すとともにその内容を説明。
入札物件を決めた田中さんと、入札価格の検討に入った。それにはまず買受代金の他にどれだけ付帯費用がかかるかを出してみる必要があります。
土地:固定資産評価額×40%×税率5%
建物:固定資産評価額×5%
他に代金納付や引渡命令の手続き費用として印紙代や切手代が必要となります。・・・・約1万円弱
築年の古いマンションの場合には、水回りの補修などにお金がかかるケースが多く、その分は余裕を見ておいたほうが良いでしょう。 また競売不動産ということもあり鍵の交換代なども考えておく。
本例の場合明け渡し命令がとれる物件なので、もし強制執行による明渡しを行う場合に要する費用として約60万円を計上した。 この金額をベースに占有者との示談交渉に臨む。
入札から明け渡し完了までの諸手続きの代行や、調査、占有者との示談のお手伝いなどに要する費用であり、当事務所の場合には3%〜5%程度です。詳細は当社入札代行システムをご覧ください。
入札価格検討にあたり、ここ最近の入札傾向をみてみることにしました。
ここ一ヶ月で開札対象となった物件数は、約50件前後。この中から類似の物件開札結果を拾い出す。なお金融機関の自己競落またはそれに準ずる入札については除きます(本例においては、債権者内容からまずそういったことは無いと判断)。
主な開札結果事例を検討したところ、最近の中古マンション市場の低迷から、入札なしの物件もあり、さほどの競合は考えられません。しかし、築年が新しく、また明渡し命令の取れる物件についてはそこそこ入札が集まっている。田中さんとしては、予算2000万円程度はあるものの、できれば割安で購入したい。
そこで打ち合わせの結果、入札が1〜3本入ると仮定し、最低売却価格の10%を上乗せすることとしました。
具体的には、入札価格1670万2千円です。
なお、最期の2千円は戦術的につける端数。
入札保証金を銀行から振込み、入札書類一式を整え執行官室へ提出してあとは開札を待つだけです。
入札してから一週間経ち開札日。私と田中さんは地裁の不動産売却場へと足を運びました。
午前10時、いよいよ開札。入札書の入った箱が開けられ、入札書が一枚ずつ封筒からだされます。入札書は物件毎にバインダーに挟まれて、執行官の手元に渡されます。
執行官は渡された入札書をチェックしていく。こうした作業に30分位要した後、開札結果の読み上げに移ります。次々と開札結果が読まれ、いよいよ田中さんが入札した物件の番、「事件番号」つづいて「最低売却価格」が読み上げられます。
・・・結果発表です。「入札人○○建設株式会社、入札価格1380万円」から始まり、三番目に「入札人 田中 豊、入札価格1470万2千円。以上の結果田中豊を入札価格1470万2千円で最高価買受申出人と決定します」と告げられました。
思わず田中さんと握手。落札決定です。
田中さんと今後のスケジュールの打ち合わせで、占有者との接触は当初の予定どうり一週間後の売却許可決定が確定してからで、田中さんには融資銀行に落札できたことを報告してもらうことになりました。
さぁ、本番です。
売却許可決定後一週間は執行抗告期間です。執行抗告が無いことを祈りつつ、期間の経過を待ちます。
一週間を経過し、無事執行抗告もなかったことから、いよいよ明け渡しの交渉に。裁判所に売却決定謄本を申請し、これをもって占有者との交渉に臨みます。
占有者と接触するため、現地へ赴きノックをしますがまだ帰っていない様子です。
しばらく待ちましたが帰る気配もないので、あらかじめ用意しておいた手紙をドアに挟みました。
手紙には、以前お伺いした者であること、今回の入札で当方が落札したこと、及び今後の話し合いをしたいので連絡をくれるようにとの旨を書いてあります。
もちろん、これらの仕事は「代理人」である私の仕事です。
翌日、占有者であるケンジ氏から当方に連絡があった。ケンジ氏は出て行かなければいけないことは分っているが、当方の条件次第であると匂わせます。
それとなく希望条件を聞いてみると、自分の引っ越し費用や新居の資金、さらに他に借金もあるので100万円ぐらいは欲しいと。
占有者の話を聞いてあげること、聞き出すことは代理人の腕の見せ所なのです。
一応の言い分を聞いた後、後日連絡をすることに。
明渡しについて田中さんと善後策を協議した結果、明け渡し費用はなるべく当初予算内とするため、次の方針を決定。
明渡し命令の申立ては、申立てから約10日後無事に発令され命令書が送達されました。
これをまってケンジ氏との明渡しの本格的な交渉に移ります。もちろん、私の仕事。
電話、そして面談での交渉を重ねます。
明け渡し費用50万円 明け渡し期限20日後
で合意を得ました。当初の半分です。